English translation

二兎

「二兎(にと)」は愛知県岡崎市のお酒です。

「二兎(にと)」の由来

2015年に発売開始された「二兎」。二匹のウサギが向かい合わせに描かれているイラストは印象的です。

二兎を追うものしか二兎を得られないというコンセプトから生まれました。

“二兎を追うものは一兎をも得ず”、つまり二つのモノを欲張ってもどちらも失敗して手に入れられないという従来の意味ではなく、敢えて欲張って色々な要素を追求したお酒なのです。

味と香り、酸と旨み、重いと軽い、甘いと辛い、複雑と奇麗。一見相反するこれらの要素を取り込み、最高のバランス、味わいになるように造られました。

「二兎」が生まれるまで

丸石醸造は長い歴史とともに地元に密着したお酒造りをしていました。

百貨店で販売する贈答用の「徳川家康」シリーズ、江戸時代から続く歴史を持つ、地元向けに造る「三河武士(みかわぶし)」、地元のお祭り、神事などに使う「長誉(ちょうよ)」。どれも地域密着型です。

徳川家康・三河武士・長誉

しかし、全国の人に飲んでもらえる美味しいお酒を造りたいとの思いから5年かけて造ったのが「二兎」です。

山田錦や雄町といった全国的にも有名な酒米を使い、新鮮さ、バランスを求めながら独自のお酒に仕上げました。

今では岡崎のお米、萬歳を使った「二兎」も出しています。

中身がよくても手に取ってもらわなければ始まりません。
それなら馴染みやすい動物をラベルにしてはどうか、と選んだのがウサギです。ゾウ、アリなどイメージしてみたけれど一番しっくり来たのがウサギでした。

京都にある東天王岡崎神社は“ウサギ”の神社として知られ、ウサギは氏神の使いとして信仰されています。

“岡崎”と“ウサギ”、偶然とはいえ、愛知県の岡崎市にある丸石醸造がウサギをモチーフにしたお酒を造っているのは縁起がいいですね。

岡崎神社

ラベルへのこだわり

ウサギには大きく分けてアナウサギ(rabbit)とノウサギ(hare)がいます。

丸っこくてかわいいのがアナウサギ、穴を掘って集団で暮らします。
一方、ノウサギは一匹で行動し、色んな場所を移動します。

見た目も耳が長くてワイルド。こんな感じです。

アナウサギ
アナウサギ
ノウサギ
ノウサギ

「二兎」のモチーフになっているのはノウサギ

「アナウサギのかわいらしいキャラクターは丸石の日本酒のイメージではない(深田社長)」というのが理由です。

また、一匹ではなく二匹が左右対称に向かいあっているのは“相反する要素を取り込みながらもよいバランスを追い続けている姿を表しています。

二兎

フォントはひげ文字。

墨のかすれを表現した文字はお酒の味わいの面白さをも表現しているように見えます。

輸出用のラベルにも髭文字の「二兎」にすることで、海外の人が手にとっても日本お酒だと認識してもらえるように、和スタイルのラベルにしています。

二兎

今後、季節もの、限定ものでは少し遊びの要素を入れる予定とのこと。

是非、ウサギの手元に注目してみて下さい。

すでに岡崎のお米を使った「純米二兎萬歳七十」ではウサギが稲穂を持っています。

丸石醸造について

丸石醸造は、1690年に投町三太夫により創業。
愛知県岡崎で酒造りを始めました。

岡崎といえば徳川家康公生誕の地、江戸時代は東海道の賑わいにより、丸石酒造は酒造りだけではなく、味噌、醤油、みりんも造り、明治時代に入ると金融業にまでも手を広げ、商いをするようになっていました。

しかし、1945年7月の岡崎大空襲でほぼ全てを失います。

その後、唯一焼け残った味噌蔵で日本酒造りを再開。

丸石醸造
丸石醸造

創業以来の酒造りに専念することになります。
現在の当主は18代目、深田英揮氏。

10名ほどの酒蔵で決して大きくはありませんが、「二兎」の全国展開に成功し、海外では10か国以上に輸出するまでになりました。

ただ、「今は造る量を限りなく増やしていくことより、今造れる量の中でいいものを造っていきたい」という丸石醸造。
着実にファンの層を広げています。

2019年は丸石酒造330周年の年でしたが、新型コロナ拡大感染のため特別な企画、行事が行えませんでした。
しかし、創業333年を迎える2023年は干支がウサギの年。
そしてNHK大河ドラマは松本潤さん主演で「どうする家康」が放映予定です。

岡崎が注目される年。
祝330周年のリベンジも含め、深田社長が何を仕掛けてくるのか目がはなせません。

「二兎は一杯だけではなく一本飲んでおいしいお酒にしたいです。
一杯だけだとどうしても最初の口当たり、華やかなものが美味しいということになりがちですが、一本を楽しむことにより、時間の経過や、食べるものによって最初とは違う、お?っという楽しみ方が出てきます。
だからみんなで分け合いながら、会話をしながら、食事を楽しみながら飲んでほしいと思います。
とにかくお酒は楽しんで飲んでいただきたいですね。」

深田社長からのメッセージです。


取材協力:丸石醸造株式会社 代表取締役 深田英揮氏
取材日:2021年9月29日
画像(酒と酒蔵)提供:丸石醸造株式会社

取材後記:取材は丸石醸造(株)で行いました。店舗の2階のお部屋でしたが、現れたのは若くて気さくな感じの深田社長。初めから力を抜いてお話を聞くことができました。やはりZOOMよりお顔を見ながらの取材は楽しいです。

帰りはお天気もよかったので、岡崎市内を流れる乙川沿いに東岡崎駅まで歩きました。9月の残暑で少し暑かったけど気持ちよかったです。

偶然ですが、「二兎」を取り扱っている特約店の一つが我が家から徒歩圏内のお店。新しいウサギに会うのが楽しみです。