「田中六五(たなかろくじゅうご)」は福岡県糸島市のお酒です。
「田中六五」の名前はどこから?
福岡県の西に位置する糸島市。北に玄界灘、南に雷山(らいざん:標高955m)を含む脊振山脈(せふりさんみゃく)を擁する自然豊かな土地です。糸島で作られているのが酒造好適米の山田錦。全国で5本の指に入る生産地です。
その山田錦の田んぼに囲まれた白糸酒造。田んぼの中の蔵が造るお酒だから“田中”。そして造り手も現7代目当主で社長の田中信彦氏とそのご子息たち。その苗字である“田中”の両方から「田中六五」が命名されました。
「六五」は糸島産山田錦を65%に精米したお米で仕上げたという意味。田中信彦氏は「65%にお米を磨くことによって、純米の味がダイレクトに出る」と言います。
「田中六五」の名前はどこから?
福岡県の西に位置する糸島市。北に玄界灘、南に雷山(らいざん:標高955m)を含む脊振山脈(せふりさんみゃく)を擁する自然豊かな土地です。糸島で作られているのが酒造好適米の山田錦。全国で5本の指に入る生産地です。
その山田錦の田んぼに囲まれた白糸酒造。田んぼの中の蔵が造るお酒だから“田中”。そして造り手も現7代目当主で社長の田中信彦氏とそのご子息たち。その苗字である“田中”の両方から「田中六五」が命名されました。
「六五」は糸島産山田錦を65%に精米したお米で仕上げたという意味。田中信彦氏は「65%にお米を磨くことによって、純米の味がダイレクトに出る」と言います。
ここにしかない“ハネ木搾り”
白糸酒造のお酒について語るには、全国唯一無二の“ハネ木搾り”という製法を素通りすることはできません。
日本酒造りの最終段階で、アルコール発酵した醪(もろみ)を搾り、酒粕と液体に分離する工程があります。その“搾る”方法で最も一般的なのは“ヤブタ式”と言って、片側から圧力をかけて一気に搾る機械による製法。これに対してハネ木搾りはテコの原理を用い、1個、40~110kgの石を増やしながら、醪(モロミ)を入れた酒袋に圧力を加え搾っていきます。
機械なら大量の醪(モロミ)を1日で搾るのに対し、ハネ木搾りでは1本のタンクを2日がかりで搾ります。「時間もかかるし、搾れる量も少なくなるのですが、その分、雑味が少ないお酒になります。」と田中社長。
実際に見せていただきましたが、長さ8mの樫の木も圧巻ながら、その重石となる石も重厚感があり、迫力満点です。軽いものでも1個を持ち上げるのに職人2名、大きなものになると4人がかりとのこと。時には総重量1トンを超える重石を少しずつ増やしながら圧をかけます。
「田中六五」を含む、白糸酒造のお酒は全てこの方法で搾られます。
白糸酒造のラインアップ
「田中六五」のほかに白糸酒造の代表銘柄には「白糸」シリーズがあります。
酒蔵の近く羽金山の中腹に名勝、白糸の滝注1があります。「白糸」シリーズは、そこからの伏流水を仕込み水として酒造りをする、白糸酒造の伝統的な銘柄です。
「田中六五」が福岡から全国へ発信するお酒として造られているのに対し、「白糸」シリーズは九州一円で販売するお酒。純米大吟醸、大吟醸ではなく精米歩合によってそれぞれ「白糸35」、「白糸45」、「白糸55」、「白糸70」とネーミングされているところはオシャレですね。
2021年には「白糸35」が令和2酒造年度全国新酒鑑評会において金賞を受賞。是非、九州以外でも出会いたいものです。
注1:白糸の滝は福岡県指定の名勝。
標高900メートルの羽金山の中腹に位置し、落差は約24メートル。水の流れ落ちる様子が、白糸を垂らした様に似ていることから名付けられたとされる。白糸の滝は静岡県富士宮市にあるものが有名だが、明治初期に政府が滝に名前を付けるようにと命じ、各地で富士宮の滝の名前をまねることがブームになったとも言われている。
ラベルへのこだわり
ラベルはとにかくシンプル!
「田中六五」も白地に骨太い筆遣いで「田中六五」とあるのみ。
「白糸」シリーズにいたっては、暗い所ではよく目を凝らさないとよく見えないぐらいに「白糸」の文字が下地の色に同化しているのです。でも手に取って裏返すと、さらにシンプル。
白地の真ん中に小さく「シライト55」とあるだけ。とてもスタイリッシュでワインの棚に並んでいても溶け込みそうなラベルです。
ラベルの色は“白がお米”、“青は水”などと自然の恵みを表現しているそうです。
ラベルは全て田中社長の2番目のご子息によるデザイン。「田中六五」の書体は長男の克典氏がご自身で筆をとられたとのこと。あまりに見事な筆遣いに、てっきり有名な書家の大先生に書いていただいたとばかり思っていました。
今では評判になり、他の蔵元のお酒のラベルもお手伝いされているそうです。
白糸酒造について
白糸酒造は1855年、糸島の地に創業。お酒の名前は名所・白糸の滝から名付けられました。以来、地元に根付いたお酒造りを続け、現在の田中信彦氏が7代目当主。糸島にはその昔、10軒ほどの酒蔵がありましたが、残っているのは白糸酒造のみ。糸島の人とのつながりを大事にお酒造りを行っています。
社長には3名のご子息がいらっしゃいますが、長男の克典氏が東一酒造(佐賀)に修行に行かれ、そこでの出会いが「田中六五」を造るきっかけになりました。
初めは、少量からのスタートでしたが、年々、量も増え、味もグレードアップしていくうちに、少しずつ福岡を中心に浸透していきました。
今では他の蔵元はもちろんのこと、色々なジャンルの人たちとの交流を通して、時代に合ったお酒の造り方、方向性を模索しているそうです。
最後に田中社長からのメッセージです。
「私たちは誰が飲んでも美味しいお酒、のどにひっかかりのないお酒造りを目指しています。そしてそのお酒を福岡のみなさんに飲んでもらいたいですね。」
「“田中六五”は11月から1月までは生酒で出荷しています(その期間以外は火入れしている)。生酒ですが、お燗をしても美味しいんです。生酒をお燗?と思われるかもしれませんが、是非一度試してみて下さい。えっ?という発見がきっとありますよ。」
取材日時:2021年11月15日
取材協力:(有)白糸酒造 代表取締役・7代目当主 田中信彦氏
画像提供:白糸酒造ウェブサイト
取材後記:広々とした地の真ん中に建つ蔵を訪れた時は、その伸びやかなたたずまいに思わず深呼吸をしたくなる感じでした。
代表取締役の田中氏自らが取材に応じて下さり、最後には蔵の中を大変丁寧に案内していただきました。毎年、柿渋を塗り直しているというハネ木や柱は伝統の重みがあるのに、後ろを振り返ると近代的な設備が並んでいます。
アルコール度数を測るのも昔は全て手作業だったのに、今ではあっという間に測れる機械が導入されています。“伝統を守りながらも新しいものを取り入れていく”という白糸酒造を十分に感じることができました。
室内から見える素晴らしい日本庭園の真ん中に1本の白梅の古木。そこから命名したという「しらうめの庭」を帰りに購入して帰りました。 大吟醸の十年古酒で仕込んだというこの梅酒、開けるのが楽しみです。